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素人ヤドリバエ屋の庵室
a hermitage of an amateur Tachinidist
標本の作製方法
ヤドリバエ科の標本の作り方は単純です。

通常の標本針を使用する場合は、
上図のように、胸部の、正中線より少しズレた場所に針を刺します。
(まあ、正直、もし正中線上に刺してしまったとしても、
別に同定できないとかいうことはないです。)
※ちなみに、ヨーロッパでは胸部側面に針を刺すことが多いようです。
この刺し方は日本だとあまり見かけません。
微針を使用する場合は、
針自体が小さいのであまり刺す位置は気にする必要がないかもしれませんね。
虫体を刺した微針を微針専用台に固定します。
どちらの場合にせよ、展翅・展足の必要はありません。
むしろ、上図のように、
翅は正中線に沿った形でたたみ、
脚は下へぶら下げた形にするのが好ましいのではないかと思います。
これは、同定の際に脚の付け根などを観察する必要があるのですが、
脚を開いていると観察できないことがあるためです。
口吻も、柔らかいうちに、なるべく引き出しておくのが好ましいです。
とはいえ、翅・脚・口吻などについては、こうするのが好ましいというだけであって、そうしていない標本が価値が下がるということではないです。
あまり気にしすぎる必要はありません。
唯一、気にしないといけないのは剛毛です。
同定に非常に重要な形質であるにもかかわらず、剛毛はすぐ取れてしまいます。
生きている間はほとんど欠落しませんが、
死後しばらくして固まってしまうと、ちょっと触れただけですぐ取れてしまうのです。
剛毛が取れてしまうと、同定が一気に困難になってしまいます。
なので、
ハエ屋というのは、基本的には、採集して〆た直後、その日のうちに標本をつくります。
採集した量が多ければ、夜まで標本作りが長引くのも普通です。
遠征採集であれば、遠征先でマウント作業をします。後回しにできないのです。
液浸標本(エタノール)の場合は、
その点、針を刺さずに、虫体を液中に入れるだけでいいため、
剛毛を破損するおそれが低く、作りやすいというメリットがありますね。
なるべく早めに作ったほうがいいですが、液浸の場合は、その日のうちに作る必要はないです。

生殖器は、もし可能ならば、固まる前に抜いておくのが吉です。
あとで解剖して観察することもできますが、腹部を多かれ少かれ犠牲にすることになります。
(できなければ無理をしなくて大丈夫です。
博物館に置いてある標本などでも、交尾器の抜いてあるものはごく少数です。)
上図のように、腹部腹面末端に注目します。
〆た直後、第四腹板と第五腹板の境界の膜質部を、針を使って切ります。
そうして、第五腹板の前方の縁が完全に切り離された状態にします。
次に、その切り離された空間に針を入れ込んで、第五腹板を手前に引っ張り上げます。
そうすると、もし本当に〆た直後であれば、
第五腹板だけでなく、その後の節(生殖節)も一緒に、
膜質部からすぐ切り離されていくはずです。
取った生殖器は、まだ解剖・観察をしないのであれば、
虫体を刺した標本針に巻きつけて保管しておきます。
膜質部から切り離したとき、液がでていたりすることで、
これを使って針から剥がれ落ちないように固定することができますが、
うまくいかなければボンドなどをごく少量だけ使って固定して保管します。
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